2013年12月4日水曜日

12/1 カンタ・ティモール

「Canta!Timor(カンタ・ティモール)」という映画を見ました。

2002年に独立した東ティモールの惨状については、ここに書くべくもありません。

もちろんその事が色濃く描かれてはいるものの、政治的な映画ではなくて、広田さんという女性が10年にわたってティモールを訪れ、大切に作り上げた人間関係の中で、少しずつ現地の人々の言葉を引き出し、そのインタビューを中心に描かれたものでした。

その様々な言葉たちを、ティモールのミュージシャン「アレックス」とその仲間たちの音楽のメッセージが、見事に貫いていました。

ティモールは、もともと文字のない文化であったそうで、コミュニケーションや教育において音楽が大きな意味を持っています。

アレックスは、映画の中で、「いいかい、小さなものの言葉を代弁して歌うんだ。」と子供たちに言い聞かせていました。

―人間は大きな力(文明)に流されて行ってしまう。その先で、心は荒れ、大切なものを失ってゆく。小さなものの声に耳を傾けるんだ―

それは紛れもない本物の「歌」でありました。

僕たちは音楽という名の「お遊戯」を、どれほど本当の人間の言葉のようにうそぶいて来たでしょうか。

少なくとも自分のギターなどは、ただの指の体操であります。



監督の広田さんと打ち上げで話をする機会に恵まれました。

ティモールの人の中には、現地語の分からないこちらが英語で話しかけると、向こうは英語が分からないのに、通訳が伝える前に現地語で的確な答えが返ってくる、そんな人がいるそうであります。

それは、当然僕たちの方が忘れてしまった力なのでしょう。

彼等は、インドネシアの兵にどれほど仲間や家族を虐殺されても、決して逆にとらえた捕虜を拷問したりせず、自分たちの心情や、正しい道を説き、傷つけずに帰した。

そのことで、ティモール側についた兵もいたのだとか。

そして彼らの信じる、日本の八百万の神に似た自然信仰「ルリック」の力。

そのような事象が積み重なって独立を導いた、などというほど世界は楽観的ではありません。


でも、本当の人間の生活、本当の文化、本当の芸術は、そんな人たちにこそ与えられるのではないか、とも思います。

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