2014年3月5日水曜日

3/4 桶屋の風

職場の帰りの時間に、障がいを持った男の子が、時々まったく帰らなくなってしまうのです。

上手にコミュニケーションが取れない人なので、理由が分からず半ばみんな困っていました。いろいろな言葉や方法で何とか帰そうとするのですが、いっこうに効き目がありません。

ところが今日、同じ障がいを持った女の子が、お水飲む?と言ってコップにお水を汲んで持ってきました。

そんなのいらないだろ、と僕は思ったのですが、彼はそれをゆっくり手にとって飲み干すと、何と急に動き出して準備を始めて帰って行きました。

喉が乾いていたから帰らなかったわけではないと思うのですが、いやー思いつかなかった、何だか不思議なことだなあと思いました。


それでちょっと思い出した出来事に。

ずいぶん前、夜遅く帰り道を自転車で走っていると。

信号待ちで後ろに停まった自転車の男性が何かぶつぶつ言っていました。

何だろうと思って聴いていると、「道を譲ってあげたのに…」とか、「ありがとうも言わない。」とか、そんなことをぶつぶつ言っているのです。

よく思い返してみると、僕は少し前に路肩に停まっていたその男性を追い抜いたのでした。

ただ停まっているだけのように見えたので、しゃーっと通り過ぎたのですが、実は僕のために道を譲っていたらしく、僕が何の挨拶もしなかったのが彼の気に入らなかったらしいのです。

彼は信号待ちの間、目を合わせるでもなく、そっぽを向いて何やらぼそぼそ文句を言っているので、僕もちょっとだけ好戦的な気持ちになってしまい、「僕に行ってるんですか?」と聴くと、そうだ、と言わんばかりにいろいろとやはり文句を言うのです。

こちらも少し熱くなって、ただ停まっているようにしか見えなかったから特にお礼を言わなかったとか、そういうことは自発的にするものだから、お礼がなかったとしても怒るものじゃないでしょ、と伝えようとしたのですが、いっこうに納得する気配がありません。

夜中の交差点でしばらくの間、押し問答をした挙句。

とにかくお礼を言ってくれればいいのだ、というようなことを彼が言うので、僕もだんだん面倒くさくなって、「わかった!ありがとう。」と半ばぶっきらぼうに言うと、彼は納得したらしく「ありがとう。」と言って握手を求めてきました。

僕は拍子抜けしてしまって、何だか急にイライラもなくなって彼の手をとりました。

それじゃ、といって男性は行ってしまったのですが、僕は何だか妙にさっぱりした気持ちになりました。

お互いに手を振って別れたりしてしまったのです。


どちらかの主張が通るか通らないか、ということよりも、ほんのちょっとしたことでぱっと全部が解決してしまうこともあるのですね。

社会で起こっている沢山の問題も、その方法を思いつかないだけで意外とそんなものかもしれないと思いました。

0 コメント: