2014年10月4日土曜日

10/4 蝶のご夫婦


バタンと車に乗ると、いったい何時入り込んだのか、2匹の大きなちょうちょが助手席のシートでお尻とお尻をくっつけてじっとしていました。

真っ最中だったのです。

引き離すのもかわいそうだし、こう、2匹の羽を同時に持って取れないように動かしたらだめかな、などと考えたりして、うーむ、デリケートな瞬間に立ち会ってしまったと思いながら、しかたなく一緒について来てもらうことにしました。

つまり僕は繋がったままのご夫婦と一緒にずーっと車を運転しなくてはなりませんでした。

結局そのご夫婦は、僕が用事を済ます1時間以上の間ぴくりとも動かないのです。


帰り道になって、ひょっとして死んでるのかな、まったく人の車の助手席で幸せな連中だなあ…と思い始めたころ、急にもじもじもじもじと動き始め、駐車場に車を停めた途端に、ついにクライマックスを迎えたらしく、2匹同時に麗しく羽を開いて飛び立ちました。

運転中に飛び立たれると困るので、じっとしてなさいよ!と語りかけていたのが伝わったのでしょうか。


蝶が目覚めたように、羽を広げる瞬間はとても美しかった。

僕はしばし呆然と眺めてしまったが、普段はどこか野の陰で知らないうちに生命を育んでいるわけです。

根源的な瞬間の美しさ。

いわんや我々人間をや、であります。

人間のは別に観察したいとは思いません。皆さんご自由に。

ただし人の車に乗り込まないように。

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